事案の概要(弁護士に委任するまでの経緯)
K社は、大阪市内で店舗を借りてお菓子店を経営していました。
K社は、賃貸人から、①5ヶ月分の賃料が未払いであること、②賃貸借契約の内容に反して火災保険に加入していなかったことなどを理由に賃貸借契約を解除し、30日以内に店舗から退去するよう求められました。
K社は、遅れながらも賃料の支払日の2週間後には賃料を支払っていたため、賃貸人の主張内容には理由がないと考えて無視していたところ、賃貸人から裁判を起こされました。
自分自身で裁判に対応できないと感じたK社は、原田弁護士に裁判の対応を委任することにしました。
裁判での主張・立証内容
K社の賃料支払状況を精査したところ、賃貸人が賃貸借契約を解除する旨の通知書を送付した時点では、K社の未払い賃料は2ヶ月分のみでした。また、賃貸人が賃貸借契約を解除した方法は、無催告解除でした。
そのため、裁判では、主に、
「無催告解除の特約がないにもかかわらず、賃貸借契約の無催告解除ができるのは、賃貸借契約の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借契約の関係を著しく困難ならしめるような不信行為のあった場合の極めて例外的な場面に限定される」(最高裁昭和27年4月25日付判決)、
「家屋の賃貸借において、賃借人が11ヶ月分の賃料を支払わず、また、それ以前においても度々賃料の支払を遅滞したことがあっても、賃貸借契約を解除するには、他に特段の事情がないかぎり民法541条所定の催告が必要である」(最高裁昭和35年6月28日付判決)
という2つの最高裁判例に基づいて反論を行いました。
解決結果
K社は、店舗内でネズミ被害が発生していたこと、賃貸人との関係が悪化したことなどを理由に、賃貸人から相当額の立退料を受け取れるのであれば、退去してもよいと考えていました。
この点、賃貸人が当初提示した立退料の金額は100万円で、金額を上げたとしても200万円が限界だと主張していました。
これに対して、100万円~200万円は住居の立退料の相場水準であって、飲食店の立退料としては金額が低すぎるなどと反論して粘り強い交渉をした結果、賃貸人が500万円の立退料を支払うことを引き換えに、K社が店舗から退去する和解が成立しました。