本稿では、中国人との離婚の法律問題のうち、①日本と中国のどちらの裁判所で離婚調停・裁判を行うのかという国際裁判管轄の問題、②日本法と中国法のどちらで離婚問題を処理するのかという準拠法の問題について、簡単に解説します。
日本人と中国人との離婚
国際裁判管轄(裁判所の選択)
日本で在住している日本人と中国人が離婚する場合、相手方は日本国内に居住しているため、日本の裁判所で離婚調停・裁判をすることができます(人事訴訟法第3条の2第1号)。
日本人と中国人の夫婦が日本で居住していましたが、相手方の中国人が中国に帰国してしまった場合、日本の裁判所で離婚調停・裁判をすることはできるのでしょうか?
この場合は、夫婦の一方の住所は日本にあり、夫婦の最後の共通の住所は日本であるため、日本の裁判所で離婚調停・裁判をするこができます(人事訴訟法第3条の2第6号)。
もっとも、日本の裁判所が中国在住の中国人に対して離婚調停の申立書や離婚裁判の訴状を送付するには半年~1年もの時間がかかるため、相手方が中国にいる場合は、中国の弁護士に離婚調停・離婚裁判を依頼して、中国の裁判所で離婚問題を処理した方が解決が早いかもしれません。
準拠法(法律の選択)
日本で在住している日本人と中国人が離婚する場合、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるため、日本法で処理をします(法の適用に関する通則法第27条)。
つまり、日本の裁判所で日本在住の日本人と中国人が離婚調停・離婚裁判をする場合には、日本の裁判所は日本の法律で、離婚や財産分与、離婚慰謝料などの夫婦の離婚問題を処理することになります。
もっとも、子どもの親権は子どもの国籍の国の法律(法の適用に関する通則法第32条)、子どもの養育費は子どもが居住している国の法律(扶養義務の準拠法に関する法律第2条1項)で処理をします。
中国の法律では、子どもの親権について、いわゆる共同親権が採用されていますので、子どもの国籍が中国の場合は日本の法律と異なる処理になってしまうことに注意が必要です。
中国人と中国人との離婚
国際裁判管轄(裁判所の選択)
日本の法律は、日本人か中国人であるかの違いによって、日本の裁判所を利用することができるかどうかを区別していません。
日本人と中国人との離婚の国際裁判管轄(裁判所の選択)で説明したとおり、相手方が日本国内に居住しているか、相手方が中国に帰国していても夫婦の最後の共通の住所は日本であったかどうかによって、日本の裁判所で離婚調停・裁判をすることができるかどうかを決めています。
つまり、中国人と中国人との離婚であっても、日本人と中国人との離婚の場合と同様に、相手方が日本国内に居住している場合、相手方が中国に帰国していても夫婦の最後の共通の住所は日本であった場合は、日本の裁判所で離婚調停・裁判をすることができます。
準拠法(法律の選択)
中国人と中国人が離婚する場合、両者ともに中国国籍であるため、中国法で処理をします(法の適用に関する通則法第25条、第27条)。
つまり、もし日本の裁判所で中国人同士が離婚調停・離婚裁判をする場合には、日本の裁判所は中国の法律で離婚問題を処理することになります。
中国法に基づく離婚は、日本法とは違い、2年間以上の別居で離婚が認められることなどに注意が必要です。
子どもの親権は子どもの国籍の国の法律(法の適用に関する通則法第32条)、子どもの養育費は子どもが居住している国の法律(扶養義務の準拠法に関する法律第2条1項)で処理をします。
つまり、中国国籍の子どもの親権は中国法で処理をするためいわゆる共同親権となり、子どもが日本に居住していれば養育費は日本の法律で処理することになります。